医療費の総額だけでは見えにくいこと
日本の医療費を考えるとき、まず目に入りやすいのは、国民医療費が何円だったかという総額です。厚生労働省の資料によると、国民医療費は2020年度に429665億円、2021年度に450359億円、2022年度に466967億円、2023年度に480915億円でした。資料上、2020年度から2023年度まで、金額は年度を追って大きくなっています。
ただし、医療費の総額だけを見ていると、その規模が経済全体の中でどの程度なのかは分かりません。経済の大きさが異なる国同士を比べる場合や、異なる時期の負担感を考える場合には、医療費をGDPとの比率で示す方法が役立ちます。
「GDP比」という見方
World Bankが掲載する「Current health expenditure (% of GDP)」は、現在の医療支出が国内総生産、つまりGDPの何%に相当するかを示す指標です。この指標では、医療に使われた金額を単独で扱うのではなく、経済全体の規模との関係で捉えます。
| 年度 | 国民医療費 |
| 2020年度 | 429665億円 |
| 2021年度 | 450359億円 |
| 2022年度 | 466967億円 |
| 2023年度 | 480915億円 |
この表から確認できるのは、日本の国民医療費が各年度にどの水準だったかということです。一方、GDP比の指標を使うには、医療支出とGDPを同じ基準で比較する必要があります。したがって、国民医療費の金額と、World BankのGDP比指標は、似たテーマを扱っていても、そのまま同じ数値として置き換えられるものではありません。
金額と比率は役割が違う
金額は、医療に投入された規模を具体的に把握するのに向いています。医療機関や医療サービスに関わる支出が、どの程度の額になっているのかを読者がイメージしやすい点が特徴です。
これに対してGDP比は、医療支出を経済全体とのバランスで見るための指標です。総額が大きい場合でも、経済全体の規模も大きければ、GDPに占める割合は別の形で表れる可能性があります。逆に、総額だけでは目立たない変化でも、経済規模との関係で見ると意味が変わることがあります。
そのため、「医療費が増えた」という事実と、「GDPに占める医療支出の割合がどうなったか」は、分けて確認する必要があります。前者は金額の動きを示し、後者は医療支出の位置づけを示すからです。
指標を読むときの注意点
国民医療費とCurrent health expenditureは、名称や集計方法、対象となる支出の範囲が一致するとは限りません。今回確認できる資料では、国民医療費については年度ごとの金額が示されています。一方、関連資料として示されたWorld Bankのページは、GDP比で医療支出を見るためのデータ項目です。
したがって、二つの資料を使うときは、数値を直接つなげて結論を出すのではなく、それぞれが何を測っているのかを確認することが大切です。医療費の「大きさ」を見る資料と、医療支出の「経済全体に対する割合」を見る資料を使い分けることで、医療と経済の関係を一つの角度に偏らず考えられます。
日本の医療をめぐる議論では、医療費の増減だけでなく、その金額が経済全体の中でどのように位置づけられるのかにも目を向ける必要があります。GDP比は、そのための基本的な物差しです。
出典
- 国民医療費(厚生労働省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004044642
- Current health expenditure (% of GDP)(World Bank)
https://data.worldbank.org/indicator/SH.XPD.CHEX.GD.ZS