医療と健康の世界統計
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病院が多ければ長寿なのか――「医療の量」と「健康の結果」を切り分ける

医療と健康について、世界の統計を定点観測する

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同じ統計表に並んでも、意味は同じではない

地域の健康を調べると、平均余命や病院数など、性質の異なる指標が同じ「健康・医療」の分野に並んでいることがある。そこで注意したいのが、医療機関の多さと住民の寿命を直ちに結び付けないことである。

社会・人口統計体系によると、2020年度の北海道札幌市では、男性の0歳平均余命が81.30年だった。一方、2020年度の人口10万人当たり一般病院数は9.0施設である。どちらも地域の医療や健康を考える材料にはなるが、前者は健康の結果に近い指標、後者は医療提供体制の一部を表す指標だ。同じ地域の数値だからといって、一方が他方を決めたとはいえない。

地域・指標時期数値
北海道札幌市・男性の0歳平均余命2020年度81.30年
北海道札幌市中央区・男性の0歳平均余命2020年度81.60年
北海道札幌市北区・男性の0歳平均余命2020年度81.30年
北海道札幌市・人口10万人当たり一般病院数2020年度9.0施設

病院数は「利用しやすさ」そのものではない

人口当たりの一般病院数は、人口規模をそろえて地域の施設量を見るための指標である。しかし、その数だけでは、病院までの移動時間、診療内容、受診のしやすさ、必要な医療を受けられる時間帯などは分からない。規模の異なる病院も、施設数として数える場合には同じ一施設になる。

また、住民が行政区域の外にある病院を利用することも考えられる。市内の病院が一部の地域に集まっていても、市全体では一つの医療圏のように機能している場合がある。このため、市単位の施設数を、そのまま各区の住民が利用できる医療の量として扱うのは慎重であるべきだ。

人口を分母に置くことで比較しやすくはなるが、「施設が存在すること」と「必要な人に医療が届くこと」は別の問題である。

平均余命にも医療以外の要素が重なる

2020年度の男性の0歳平均余命を見ると、北海道札幌市は81.30年、中央区は81.60年、北区は81.30年だった。市全体と区の値を並べると地域内の違いに目が向くが、これも病院数だけで説明することはできない。

平均余命には、日々の生活環境、健康状態、受診行動など、さまざまな事情が重なって表れる。さらに、市全体の値は、各区の値を単純に同じ重さで平均した数字だとは限らない。人口構成の異なる地域をまとめた結果だからである。

中央区の値が市全体や北区より長いという事実は読み取れる。ただし、その差の原因が一般病院の配置にあるとは、この資料だけでは判断できない。そもそも今回示された一般病院数は市全体の値であり、中央区や北区について同じ条件の数値がそろっていないためだ。

二つの指標は「因果」ではなく「問い」をつくる

一般病院数と平均余命を一緒に見る意義は、単純な結論を出すことではない。むしろ、追加で確かめるべき点を見つけることにある。

病院の数が同じでも、規模や役割が異なれば、提供できる医療は変わり得る。平均余命が異なる地域についても、医療機関の利用状況や生活環境などを確認しなければ背景は見えてこない。反対に、平均余命が同じ地域でも、そこに至る医療や生活の条件が同じとは限らない。

統計を読む際は、「医療資源がどれだけあるか」と「住民の健康がどのような結果になっているか」をまず分ける。そのうえで、対象地域、時期、分母、集計単位が対応しているかを確かめる。この順序を守ることで、病院が多いから長寿、少ないから短命という短絡を避けられる。

施設数は医療の入口を映し、平均余命は多くの条件が重なった結果を映す。両者の間を埋める情報が不足していると認識することも、地域の健康統計を正確に読むための重要な作業である。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0000020209

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0000020309