日本の医療をめぐる数字は、一つの方向をそろって向いてはいない。最も目立つのは乳児死亡率で、出生1000人あたり1.8人と196か国中4位に位置し、世界値27.7人のおよそ15分の1にあたる。一方で医療への支出は対GDP比10.74%(193か国中20位)、一人当たり3,638ドル(193か国中24位)と、高所得国の中では中位にとどまる。体制の面でも差が開いており、病床数は1000人当たり12.59床で201か国中6位と最上位層に入るのに対し、医師数は1000人当たり2.649人で208か国中73位である。(出典: World Bank, World Development Indicators)
中心指標の最新値
先頭の指標である医療費(対GDP比)を見ると、日本は10.74%で、対象193か国中20位にあたる。同じ指標の世界値は10.02%なので、日本はこれを約0.7ポイント上回っているにすぎず、「世界平均よりやや上」という水準である。上位を占める国と比べれば差は明確で、アメリカは16.69%(3位)、ドイツは12.27%(9位)と、いずれも日本を上回る。最新年は2024年公表分にあたる。(出典: World Bank, World Development Indicators — Current health expenditure (% of GDP))
上位と下位の顔ぶれ
医療費(対GDP比)の上位は、ツバル27.09%(1位)、ナウル18.21%(2位)、アメリカ16.69%(3位)、アフガニスタン14.99%(4位)と続く。下位は、ラオス1.33%(193位)、バングラデシュ2.17%(192位)、ブルネイ2.23%(191位)、ジブチ2.28%(190位)、カタール2.52%(187位)である。上位には高所得国だけでなく、経済規模の小さい島嶼国や紛争の影響を受けている国が混じり、下位には資源に恵まれた高所得国も入る。つまりこの順位は、単純な豊かさの並びにはなっていない。分母であるGDPの大小によって値が動く指標だからである。日本(20位)は全体としては上位寄りに位置するが、最上位層とは距離がある。(出典: World Bank, World Development Indicators — Current health expenditure (% of GDP))
この10年でどう変わったか
日本の医療費(対GDP比)は、2012年の10.67%から2021年に12.08%、2022年に12.32%まで上がったあと、2023年には10.74%へ下がっている。一人当たり医療費は2012年の5,232ドルから2021年に4,844ドル、2023年には3,638ドルとなり、直近2年で約25%減った。ただしこれは当年の米ドル換算値であり、為替の動きが強く影響する点に注意がいる。医師数は2012年の2.283人から2022年の2.649人へ約16%増えた。病床数は2011年の13.37床から2022年の12.59床へ、0.78床(約6%)減っている。乳児死亡率は2013年の2.2人から2019年に1.8人まで下がり、以降2024年まで1.8人で横ばいである。(出典: World Bank, World Development Indicators)
近い国とくらべる
主要国と並べると、位置の偏りがはっきりする。対GDP比では日本10.74%(20位)に対し、アメリカ16.69%(3位)、ドイツ12.27%(9位)、フランス11.54%(13位)、英国11.13%(16位)が上に、韓国8.68%(50位)、中国5.94%(106位)が下にくる。一人当たりでは日本3,638ドル(24位)はアメリカ13,473ドルの約27%、ドイツ6,849ドルの約53%、英国5,860ドルの約62%であり、韓国3,137ドルとの差は約500ドルにとどまる。医師数では日本2.649人(73位)はドイツ4.534人、アメリカ3.681人、英国3.301人、中国3.112人を下回り、韓国2.61人(74位)とほぼ同水準である。病床数は逆で、日本12.59床(6位)はアメリカ2.68床(86位)の約4.7倍、英国2.42床(99位)の約5.2倍にあたり、韓国12.81床(4位)とほぼ並ぶ。乳児死亡率では日本1.8人はアメリカ5.5人の約3分の1で、韓国2.3人やドイツ3.1人よりも低い。(出典: World Bank, World Development Indicators)
この数字の読み方
ここで扱った経常医療費(Current health expenditure)は、公的・民間を合わせた年々の支出であり、病院の建設といった資本形成は含まない。一人当たり額は当年の米ドル換算のため為替変動の影響を強く受け、円安の局面では自国通貨ベースの動きと一致しないとみられる。医師数は臨床に従事する範囲の取り方や集計年が国ごとに異なり、日本の系列は隔年かつ変化が滑らかで、推計を含む可能性がある。病床数は急性期・慢性期・精神科などどこまで数えるかが国により異なるため、多いことをそのまま手厚さと読み替えることはできない。乳児死亡率は国際機関の推計値で小数1桁の表示のため、ベラルーシ・日本・スロベニアのように同じ1.8人が並び、3位・4位・5位の差は表示上のものにすぎない。この指標は値が低いほど良く、順位表の「上位」は低い順である点にも注意がいる。指標により最新年が2023年と2024年に分かれるため、掲載の最新値と推移データの最終年が一致しない場合がある。更新はいずれも年1回程度である。支出・体制・結果の三者の関係をこのデータだけから判定することは難しく、比較には注意がいる。(出典: World Bank, World Development Indicators)
医療費(対GDP比)を地図とグラフで見る
世界地図: 医療費(対GDP比)(2024)。色が濃いほど値が大きい。橙の枠が日本。 出典 World Bank (WDI)